劇場版の製作も決定した人気テレビアニメ「SHIROBAKO」の魅力に迫る

お仕事シリーズ 第2弾 「SHIROBAKO」の魅力に迫る

「SHIROBAKO」はアニメ制作現場を知る教科書的存在

アニメファンであれば「SHIROBAKO」という作品名を一度は聞いたことがあるだろう。本作は「花咲くいろは」に次ぐP.A.WORKSのお仕事シリーズ(働く女の子シリーズとも呼ばれる)の一作品として知られている。

シリーズ第二部としてスタートしたこの作品は、主人公を始め、登場人物全員が社会人(成人)である点も珍しく、新たな試みであると言える。そんな本作の魅力について順に見ていこう。

意外な切り口からアプローチを試みた作品

TVアニメ「SHIROBAKO」 公式Twitterより

「SHIROBAKO」は、過酷なアニメ制作現場のリアルな環境や人間関係を、実在のクリエイターをモデルにしながら描き出した、まったく新しいタイプの作品だ。既にP.A.WORKSは、温泉旅館を舞台に仲居見習いとして奮闘する女子高生、松前緒花を主役とした作品「花咲くいろは」でお仕事シリーズをスタートさせている。

第一作目から高い評価を受けている本シリーズであるが、第二作目に当たるSHIROBAKOは、更に生々しい社会人の苛烈な現場にスポットを当てるという、意外な切り口からアプローチを試みている。

前作が可愛い女子高生が主役だったのに対し、本作では短期大学を卒業した成人女性、宮森 あおいが主役であることにも注目したい。アニメ制作会社という未知の環境で、制作デスクとして日々難題に直面する宮森が、新人ながらにも持ち前の明るさを武器に、時に機転を利かせながら問題を解決していく様は、現場を知らない視聴者が見ていても清々しい。

本作には、他にも魅力ある女性たちが登場する。宮森と同じ制作会社、武蔵野アニメーションでアニメーターを務める安原 絵麻や新人声優の坂木 しずか、3Dクリエイターとして働く藤堂 美沙、アニメ脚本家を目指している今井 みどりといった、それぞれ夢を持ち日々努力を重ねる彼女たちの存在からも目が離せない。

いずれも宮森の友人であり、仕事上の悩みを語り合うシーンも豊富にあるため、現役社会人にとっては参考になる話も出てくるだろう。萌え路線から距離を置きつつも、可愛らしく魅力溢れる登場人物たちの活躍を描く本作が、多くのアニメファンから注目を集めるのは必然と言えるだろう。

社会人アニメファンや就活中の学生の心を惹きつける作風

どんどんドーナツ!どんと行こう!

TVアニメ「SHIROBAKO」公式Twitterより

宮森をはじめとする5人の女性たちは、いずれもクリエイティブな仕事を志している。第1話では、彼女たちの高校時代の様子から始まる。未熟ながらも自主制作アニメを制作している姿に、視聴者は微笑ましさを覚えることだろう。

いつか自分たちで商業アニメを作ろう。そんな大きな目標を持ち、将来を誓った彼女たちは、それぞれの分野で一人前となるべく、社会へと旅立つのだ。もちろん、現実はそう簡単には行かない。

声優もアニメーターも、皆、厳しい世界だ。日々自動車のCG制作に追われる藤堂 美沙は、務めて1年足らずの会社を辞めるべきか悩み、新人声優の坂木 しずかは、役者の仕事だけでは生計が立てられず、毎日アルバイトで多忙だ。

大きな夢を持って社会に羽ばたいた若者たちが、夢半ばで挫折しそうになる様子には、社会人アニメファンはもちろん、就職活動中の学生にとっても共感できるものがあるだろう。

そんな辛い日々の中にあっても、宮森たちは苦労を分かち合いながら、最後には「どんどんドーナツ!どんと行こう!」の合言葉と共に大好きなドーナツを食べて、明日への活力を取り戻して行く。何度挫折しても諦めない、強く、前向きな彼女たちの姿に、視聴者も元気を分けてもらえるのだ。

視聴者がアニメ制作現場をリアルに体験できる

TVアニメ「SHIROBAKO」 公式Twitterより

アニメファンであれば、一度は制作現場の様子を見てみたいと思うことだろう。過酷な現場であることは既に知っていても、具体的にどう大変なのか、制作デスクやアニメ監督という仕事の主な役割、アニメーターの苦労やアフレコ現場の様子など、いずれもアニメ視聴を趣味としている者にとっては想像の及ばない範囲であり、また、それだけに心惹かれるものがあるだろう。

そんな制作現場の不思議を、SHIROBAKOは余すところなくストーリーの中で描き出している。時にぶつかり合うスタッフの姿や、絵コンテに追われて逃走を試みる監督の様子、第一線を退いていた高齢のアニメーターが、仕事を通して自信を取り戻して行く過程など、制作現場のスタッフの日々の姿を、コミカルに、そして時にはシリアスに見せてくれるのだ。

全2クール(6ヶ月間)をかけてじっくりとアニメ制作現場のリアルが体験できるだけでも見る価値があると言えるだろう。2クール目の後半では、漫画原作者や出版社とアニメ制作陣の衝突も描かれている。その頃には、半年近く視聴してきたファンの内心は制作者サイドに置かれていることだろう。

これまでクールごとにアニメを消費してきた視聴者が、一作品の重みを感じる機会を得られる貴重な作品であるとも言える。SHIROBAKOは、制作者サイドが視聴者を現場に誘う、体験的アニメ作品であると言えるのではないだろうか。

働く女性を勇気付ける社会派アニメとしての魅力

問題の多い現場で奮闘し、毎回解決に導くポジションにあるのは、主人公、宮森 あおいである。みゃーもりの愛称で視聴者からも親しまれている彼女は、可愛らしい外見とは裏腹に、強い精神力とコミュニケーション力の高さを発揮しながら、直面する課題の数々を解決して行く。

他にも、ゴスロリ様こと小笠原綸子という主要アニメーターや、男性社員にも物怖じせずに対応し、現場の混乱を抑える制作デスクの矢野エリカなど、仕事ができる女性たちの存在にも注目したい。

働く女性はもちろん、男性視聴者も、彼女たちの仕事ぶりを見ることで活力が湧くことだろう。SHIROBAKOは、働く女性を、そして悩みを抱える全ての人を支えるアニメなのだ。

未来のアニメ制作者を生み出す可能性を秘めた作品

監督は「ガールズ&パンツァー」や「監獄学園」など、多くのヒット作を手がけた水島努である。SHIROBAKOに登場する監督、木下誠一の姿が水島に似ている辺りには、彼の思惑が込められているように感じられる。

辛く苦しい仕事として知られるアニメ制作の現場を志す若者の減少が危惧される中、SHIROBAKOが果たした役割は決して小さなものではないだろう。

一度はアニメ制作の道に進むことを躊躇っていた人たちが、本作を視聴することで、もう一度現場を目指す後押しとなった可能性も否定できない。クリエイターを目指す子供を持つ親や一般の視聴者にとっても、アニメ制作に関わる者たちの人間模様を目の当たりにすることで、未知の世界がより身近に、親しみあるものに変わる筈だ。

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お仕事シリーズの魅力

ここではP.A.WORKSのお仕事シリーズのひとつ、SHIROBAKOを紹介してきた。作品名が「シロバコ」(作品完成時に制作者が最初に手にする、成果物の納められた白い箱)であることからも、監督、水島 努が本作に込めた思いが伝わってくる。

本シリーズは既に3作品が発表されているが、SHIROBAKOは未だにファンの心を掴んで離さない魅力を持っている。心を熱くする感動を、是非とも本作品で味わって欲しい。

劇場版SHIROBAKO製作決定

さて、未だに根強い人気を誇るSHIROBAKOだが、先日行われたイベントでなんと劇場版SHIROBAKOの製作が発表された。


アニメ本編では2クールに及び我々にアニメ制作現場での厳しさや楽しさを教えてくれた彼女たちは、劇場版では一体どんな活躍をするのだろうか。今から楽しみで仕方ない。

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